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【企業分析|2998クリアル】不動産クラウドファンディングの決算注目ポイントを解説

はじめに

クリアル株式会社(証券コード:2998)は、2023年8月14日に2024年3月期第1四半期の決算を発表しました。決算発表後、同社の株価は5%以上上昇しました。この記事では、クリアルの決算内容と筆者独自の注目ポイントを交えて解説します。詳細なIR情報


は以下のクリアルの公式ページをご確認ください。

corp.creal.jp

クリアルの事業概要

クリアルは、時価総額479億円(2023/8/15時点)、従業員数88人(2023/3時点)の不動産資産運用サービス会社です。同社は単一事業セグメントですが、その中での主なサービスは以下の3つです。

  1. CREAL:個人投資家向けにクラウドファンディング技術を活用して不動産による資産運用をオンラインで手軽に1万円から開始できるサービス
  2. CREAL PB:個人投資家向けに、AI・DXを活用して抽出した優良実物不動産を対象として、中長期の資産運用サービス(2023年4月よりサービスラインの名称を「CREAL PARTNERS」から変更)
  3. CREAL PRO:機関投資家及び超富裕層向けに不動産ファンドの運用等の不動産投資サービス
2023/03(12か月) 売上高   利益  
  金額 構成比 金額 構成比
CREAL 10,223 62.2% 965 43.8%
CREAL PB 4,832 29.4% 544 24.7%
CREAL PRO 1,380 8.4% 696 31.6%

売上高の構成比からも小額投資が可能な不動産による資産運用サービスCREALに着目する必要がありそうです。

競合他社

上場企業が提供する不動産クラウドファンディングサービスとしては、プロパティエージェント(3464)のRimple、GA Technologies(3491)のRENOSYクラウドファンディング、トーセイのTREC Funding(8923)等があります。その他SBI証券のST投資や三井物産グループのALTERNAもあります。

funding.propertyagent.co.jp

www.renosy.com

trec-funding.jp

site2.sbisec.co.jp

 

alterna-z.com

 

競合は増えてきていますが、CREALの方が想定利回りや案件数を上回っており優秀にみえます。CREALはSBI証券のトップ画面にPRが設けられており動線もしっかりしていて認知度も高いです。

SBI証券トップ画面

出展:SBI証券トップ画面 左側中段にCREALサービスが展開されている

第1四半期の決算内容

業績進捗

クリアルの通期会社予想では、売上高は26,000百万円、営業利益は770百万円です。1Q実績は、売上高5,616百万円(進捗率21.6%)、営業利益は322百万円(進捗率41.8%)と順調のようにみえます

1QではCREAL案件で物流施設2件、レジデンス2件を売却し、計画を上回るTake Rateを確保していたため、利益が大幅に増益になっています。Take Rateは後ほどご説明します。

売上高 5,616百万円
進捗率 21.6%

 

営業利益 322百万円
進捗率 41.8%

前期の実績では2Qに偏重していますが、CREAL案件の物件売却によるもののようです。今後CREALの資産運用プラットフォームとしての一層の拡大により、売上高及び利益の特定の時期への偏重は解消される想定のようです。

前期進捗率(累計) 1Q 2Q 3Q 4Q
売上高 16.9% 56.8% 73.8% 100%
営業利益 20.7% 92% 97.6% 100%

KPI

CREALの売上総利益はGMV×Take Rateから成ります。

GMVはGross Merchandise Valueの略で、「流通取引総額」のことを指します。CREALでのGMVは調達時点(ファンド募集時点)の数値として集計・公表されます。しかし、CREALの売上高及び売上総利益への計上は取引決済時点(物件売却時点)で行われるため、GMVの成約から売上総利益の計上までには、多くのファンドで約1年間のタイムラグが生じます。このため、GMVはCREALのサービスの規模を示すとともに、売上総利益の先行指標となる重要なKPIとなります。

Take Rate(手数料率)は、GMVに対する運営企業の収益率を指します。CREALのTake Rateは、案件組成手数料、ファンド運用手数料、償還手数料からなる確定フィーと、ファンドの外部売却時のキャピタルゲインのプロフィット・シェアによる変動フィーで構成されています。これまでの実績を合算すると、8~10%になります。

同社は、主力のCREALのGMVの成長が同社の利益成長に大きく貢献する構造であることから、GMV、会員数、リピート投資率、売上総利益などをKPIとして重視しています。特に、GMVと会員数を重視しています。決算資料によると、GMVと会員数は計画進捗率25%を超えているため、順調に伸びていることが分かります。

会員数の推移

出展:決算説明資料 会員数の推移

GMVの推移

出展:決算説明資料 GMVの推移

注目のポイント

筆者は有価証券報告書第2【事業の状況】のうち(5)優先的に対処すべき事業場及び財務上課題について着目しました。

有価証券報告書によると以下の6つが挙げられています。

  1. 不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」の認知度の更なる向上
  2. 良質な不動産投資案件の仕入
  3. 新規許認可の取得
  4. 優秀な人材の確保と育成
  5. 内部管理体制の強化
  6. 財務基盤の強化

このうち「3.新規許認可の取得」が注目しているポイントです。

同社は、オンライン不動産投資市場の高度な成長ポテンシャルを背景に、主力のCREALを成長戦略のメインドライバーと位置づけています。その発展のため、現在は第3号及び第4号の不動産特定共同事業者許可取得の準備を進めています。

同社は、不動産特定共同事業法に基づく第3号及び第4号事業者としての許可取得を金融庁及び国土交通省へ申請しています。同許可取得により、外部のSPC(特別目的会社)を利用したクラウドファンディングでの案件組成が可能となります。SPCの活用により、物件のオフバランス化と金融機関からの借り入れを活用した大型の物件への投資、レバレッジを利かせた収益の獲得ができるようになります。借入金によるレバレッジ効果によってCREALの投資家の利回りが向上し、同社の収益の向上も期待できます。

また、SPCの活用が可能となれば、「CREAL」の売上総利益(=GMV×Take Rate)のTake Rateを構成する確定フィーと変動フィーのうち、確定フィー部分についてタイムラグがなくなります。

上記のように、新規許認可が取得できれば、更なる収益の向上が期待されます。これは同社の第2の成長ステージへ向けた事業スキームとなります。

開発内容の一覧

出展:決算説明資料 開発内容の一覧

配当

有価証券報告書では配当についても言及されていました。

同社は、事業拡大を積極的に推進しており、成長過程にあることから内部留保の充実を図り、資金を有効活用することが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えています。将来において、財政状態及び経営成績を勘案しながら配当を実施していく方針ですが、現時点では今後の具体的な配当方針は未定とのことです。

将来的には検討しているとのことですので、近い将来で株主還元策として配当を発表すると嬉しいですね。

株価予想

通期会社予想ではEPSは83.1円です。直近1年の最大PER104.1倍を適用するとEPS83.1円×PER104.1倍=株価8650円となります。6/30にPERが最大となっています。注目のポイントのように成長余地があると思えば株価は上昇しますが、少なくとも割安ではなさそうです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。本記事では、クリアル株式会社の2024年3月期第1期四半期報告書に基づく決算内容と筆者の注目ポイントを紹介しました。

当社は、小額投資が可能な不動産による資産運用サービスCREALを提供しています。案件数や会員数も順調に増えています。今後は新規許認可の取得を目指し、物件のオフバランス化と金融機関からの借り入れを活用して大型物件への投資を行い、レバレッジを利用して収益を上げることができるようになる予定です。これにより、CREALの投資家の利回りが向上し、当社の収益も増加することが期待されます。これは当社の第2の成長ステージへ向けた事業スキームとなるため、今後の注目ポイントとなるのではないでしょうか。

投資は自己判断でお願いします。

あなたは決算内容のどこにに注目していますか?ぜひコメントやシェアをお寄せください。